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東京新聞 2008年3月16日

中国製歯科技工物 米で鉛検出。製作情報「法制化を」

米オハイオ州で歯科治療で使う中国製の補綴物に鉛が含まれていることが分かり、騒動となっている。
ごく微量なため健康被害とはなっていないようだが、補綴物のような技工物に本来、鉛は含まれるべきではなく、
法整備の強化が求められている。価格の安い中国製技工物は米国で輸入量が急増中。日本にも入ってきているが大丈夫なのか-。(鈴木伸幸)

安価で輸入増 被害報告なし

 オハイオ州のテレビ局「10TV」によると、同局は歯科関連の専門誌に広告が出ていた中国の4ヵ所の技工所に発注。10日後に8個の補綴物が手元に届いた。

これを調べたところ、1つから、210ppmの鉛が検出された。また、同州ラベンナでは、73歳の女性が治療で着けられた補綴物の調子が悪く、取って調べたところ、中国製で160ppmの鉛が検出された、という。

補綴物は通常、3㌘程度なので、210ppmの鉛が含まれていたとしてもごく微量。しかも鉛が一気に唾液中に溶け出すことは考えにくく、金属中毒学が専門の大阪大谷大学の田中慶一教授は「その程度なら、健康被害という意味では問題はないと考えていい」という。実際、鉛が直接の原因とみられる被害は報告されてはいない。

だが、子どもは鉛の影響を受けやすく、米国では玩具の顔料などに使われる鉛の安全基準は90ppm。しかも、補綴物となると常に体内にあるため、米食品医薬品局(FDA)は鉛の使用を認めておらず、田中教授も「望ましいことではない」と話す。

米国では、中国製の原料によるペットフードや玩具から有害物質が見つかり、昨年、大きな社会問題となった。
歯科の補綴物についても、懸念は示されていたが、輸入量は拡大。補綴物の約15%が中国などで委託製作され、削った歯に被せる補綴物の「クラウン」の年間輸入数は700万個とも推定されている。その最大の理由は価格だ。

FDAの認定素材を使った米国製クラウンの価格は100ドルから200ドル程度。それが、中国製となると30ドル程度に収まる。このため、歯科医師から依頼を受けた技工所が中国に発注。半製品として受け取り、それに手を加えて米国製とするケースもあるという。

 ただし、すべての中国製品に問題があるわけではない。FDAの規制こそ受けないが、技術力の高い技工所もあるし、米資本の技工所で認定素材を使っているところもある。このため、米歯科技工士会はFDAに輸入規制ではなく、
補綴物の素材や製作場所の明示を法制化するよう求めている。

日本でも使用の可能性 製作情報「法制化」を

ところで、日本の事情はどうだろうか。海外からの歯科技工物は「雑貨扱い」で、輸入量の具体的データはない。だが、規模の大きい技工所が半製品を輸入し、最終加工しているという例はあるという。また、青森県保険医協会の最近の会員アンケートによれば回答した112人のうち5人が海外に技工物を依頼したことがあると答えた。

保険診療では、輸入技工物の使用は認められていないが、「雑貨扱い」に象徴されるように法的規制が緩いため、
歯科医師や技工士が安価な中国製品を個人輸入して、保険診療で使っている可能性も否定はできない。
特定非営利活動法人(NPO法人)「みんなの歯科ネットワーク」副理事長の歯科医師、大塚勇二氏はこうした問題に「体に直接、触れる技工物なのに『雑貨扱い』で輸入されるのはおかしい。

何らかのチェックが必要。また、技工物は誰がどんな材料を使って作ったか、きちんと責任の所在を明らかにするための情報管理を法制化すべき」と話している。

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