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入れ歯に関するQ&A

歯科技工ってなんですか?

歯科技工は歯科技工士法において「特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物、充てん物又は矯正装置を作成し、修理し、又は加工することをいう」と定義されています。

取り外しが可能な入れ歯(有床義歯)や口の中に固定する被せ物(クラウン/ブリッジ)、詰め物(インレー)、歯列矯正に使われる各種装置などを、歯科医師の指示に基づいて製作し、必要に応じ修理や加工を行う業務全般を指しています。

歯科技工士法では、「歯科医療を受ける国民の健康を確保するため, 一般的公益としての公衆衛生の保持」することを目的とし、「歯科医師又は歯科技工士でなければ、業として歯科技工を行ってはならない」といった歯科技工を行うための資格や、設備の基準が定められています。

また歯科技工に用いる材料は「薬事法」で「医療機器」に分類されます。医療機器はその目的、人体に対する影響に応じクラスI(一般医療機器)、クラスII(管理医療機器)、クラスIII(高度管理医療機器)、クラスIV(高度管理医療機器)に分類され、それぞれ薬事法に定められた届出、承認が必要となります。

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「輸入義歯」とはなんですか?

日本では歯医者さんの治療で用いられる入れ歯(義歯:歯科技工物)は、歯医者さん(歯科医師)もしくは歯科技工士と呼ばれる、入れ歯を専門に作る資格を持った人が作っています。

歯医者さんは「歯科医師免許」、歯科技工士は「歯科技工士免許」により歯科技工を行うことが国から許可されており、それ以外の人が製作することが禁じられています。

近年、歯医者さんの個人輸入という形で、海外で製作された技工物(もしくは「輸入義歯」)が国内での治療に用いられるケースが出てきました。

入れ歯は厚生労働省により認可された材料を用いて製作するよう、「薬機法」で定められています。しかし海外では利用されていても国内では安全性や効能がしっかり確認されていないため入れ歯の製作に用いることができない材料や、それゆえ製作できない入れ歯があります。

なるべく患者さんのために良いと思われる入れ歯が使えるよう、歯医者さんが自分の知識と経験、責任において入れ歯を個人輸入し、医学的な最善の選択として診療で適用し始めたのが輸入義歯の始まりです。

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治療上特別なものが必要ないならば、日本で作っている入れ歯を入れてもらいたいのですが…

国内でまだ承認されていないような歯科材料を用いた歯科技工物が治療に必要とされる時、国外で製作された技工物が治療に用いられることがあります。

しかし安全で優れた歯科材料であれば、日本でも薬機法による歯科材料として承認され、それを用いた歯科技工物が国内でも製作できるようになります。

治療に緊急性が求められる際、歯科医師の医学的な判断と責任において輸入・適用する場合がありますが、極めて特殊な例と言えます。

こうした医学的見地から必要性があるケース以外にも、単に低コストといった理由から国外で製作した技工物が用いられることも報告されています。

ほとんどの歯医者さんでは日本国内で製作された歯科技工物が治療に用いられていますが、ご質問のように不安のある方は「治療は日本製の入れ歯でお願いします」と先生に依頼すると良いのではないでしょうか。

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「義歯輸入」報道に対するQ&A

「輸入義歯問題」とはなんですか?

なるべく患者さんのために良いと思われる入れ歯が使えるよう、歯医者さんが自分の医学的な判断と責任において入れ歯を個人輸入、診療において適用することを目的とした輸入義歯ですが、これを行う上で日本国内の法律と矛盾する部分が生じてきました。

入れ歯は口の中に長い間納められて使用されるため、材質的な安全性や正しく機能することが求められます。そのため入れ歯を製作する人の業務や資格、製作する場所などを「歯科技工士法」で、材料の安全性やその検査方法などを「薬機法」で細かく定め、これを厚生労働省が一括して監督・指導してきました。

一方、海外で作られた入れ歯は、すでに完成された状態で国内に輸入されます。もちろん海外の工場も、治療に用いるために入れ歯をきちんと製作しているところがほとんどですが、日本以外の国では法的に入れ歯を作る資格が整備されている国はなく、また材料の安全性や入れ歯の製作に関する基準も異なります。

歯医者さんも入れ歯に用いられる材料の安全性や治療の効果などを検討の上、万全を期して輸入を行いますが、製作されている工場での状況や、使用されている材料まで完全に把握することは困難です。

歯医者さんが入れ歯の製作を歯科技工所に依頼する際、日本では「歯科技工指示書」という書類を歯医者さんが書き、これを元に歯科技工士が製作を行わなければなりません。これは診療内容、必要とされる入れ歯の製作指示をしっかりと製作者に伝えるためで、法律で決められています。

一方、海外に製作を依頼し輸入する場合にはこの法律が適用されないため、歯科技工指示書製作の必要がありません。言葉の違いによるコミュニケーションの問題もあり、適切な製作のための情報が不十分となってしまう場合があります。

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特殊なケースでのみ輸入義歯を利用するのならばそれほど問題にならないのでは?

国内では薬事法上製作することができない入れ歯が診療に必要とされる場合、歯医者さんはそれに替わる入れ歯を国内で製作する、もしくは患者さんへのベストな選択として輸入義歯を利用するという選択肢を検討します。

輸入義歯の利用を選択する上で、歯医者さんは知識や経験を元に、医学的な判断を慎重に行います。また国内では製作することができないような特殊で数少ないケースであれば、その入れ歯をしっかりとチェックすることでき、問題が生じることはほとんどありません。

「より良い歯科治療を」というこうした歯医者さんの取り組みに対し、中国など人件費が非常に安い国で入れ歯を作って輸入することで、「入れ歯の製作代金を安くしませんか」、という業者が現れました。

こうした業者は医学的判断により必要とされる「国内では製作することができない入れ歯」だけではなく、ただ経済的な理由で「国内でも製作できるが海外ならもっと安く作る事ができる入れ歯」の個人輸入を提案し、実際にこうした入れ歯が患者さんに適用されるケースが散見されるようになりました。

こうした状況に対し、平成17年、厚生労働省は歯医者さんに向けて「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」という通知を出しました。

この通達では入れ歯の個人輸入、患者さんへの適用を行う場合には、歯科医学的判断及び技術により、個々の事例に即して適切に判断されるべきものとして、患者さんへの十分な情報提供、患者さんの理解と同意を得ることを指導しています。

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日本以外の国はどうなんですか?

日本以外の国では入れ歯の製作に関し資格制度が法的に定められている国がありません。

ヨーロッパ諸国やアメリカでは、各国の歯科技工所だけではなく、中国その他の国にも入れ歯の製作を依頼しています。

入れ歯の製造を引き受ける工場も、その国の法令や依頼された国の要望に応じ、工場設備や使用材料を定め、適正な入れ歯を作るよう心がけている所がほとんどで、素晴らしい機材を備えた大型の工場も数多くあります。

入れ歯の材料の安全性や製作面を見ると、国内であれば法令による材料自体の安全性確保や歯科技工所の運営に対し、直接監督指導ができます。

一方、国外の工場や業者に対しては、こうした監督指導が難しくなります。

万一入れ歯に安全性などの問題が生じた際、国内であればその国の歯科医療を監督する省庁により、迅速な対応が可能ですが、海外で作られた入れ歯ではその原因究明や対策に時間がかかり、問題が大きくなってしまう危険性をはらんでいます。

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ヨーロッパやアメリカでも使われているのなら日本でも大丈夫なのでは?

ヨーロッパ諸国、アメリカと日本の入れ歯に関する違いは、入れ歯の製作に関する法制度です。日本でも戦後の混乱期においては、不適切な入れ歯が作られ健康被害を生じさせるような問題がありましたが、歯科治療で安全な入れ歯が使われるよう、昭和30年に歯科技工士法が制定されます。

また他の医科系機器・材料と合わせ、昭和35年に薬事法が制定され、入れ歯は「製作する人の職務と資格、製作する場所の管理」、「使用する材料」の二面から厚生労働省の監督指導がなされてきました。日本国内で製作されるすべての入れ歯はこれらの法律の元、安全性の確保がされてきました。

海外各国でもそれぞれに安全性確保のため、さまざまな法整備や取り組みがされていますが、日本を含めいずれの国においても、その法令はその国でのみ有効となります。他の国で製作された入れ歯に対しては国内に安全性を確保するための法律があってもその効果を発揮することができません。

それゆえ輸入業者や歯医者さんが責任を持つという形となり、製造を行う工場もより良い入れ歯ができるよう、独自に改善につとめますが、それぞれの考え方や取り組みにより、良いものもあればそうでないものもあるというように、入れ歯によってまちまちとなることは否めません。

これまで行われてきた日本独自の法制度による入れ歯製作は、「国内で作られるすべての入れ歯を合格点にする」ことで安全性の確保が維持されてきました。

海外で製作される入れ歯には、日本で作られる入れ歯より優れたものもある一方、合格点に達していないものもあります。

日本に輸入される際、合格点が取れているかを確認できれば良いのですが、一人ひとりの患者さんごとに形も種類も異なる入れ歯を税関や検疫において一つずつチェックすることは不可能です。

2008年2月にはアメリカ、オハイオ州で患者さんの口にセットされた入れ歯から高いレベルの鉛成分が検出されたことが報道され、アメリカの歯科技工所団体においても海外で製作された入れ歯の安全性に対し問題提起がされています。

「入れ歯によりまちまち」という点で、現在国内で製作される入れ歯より海外で製作し輸入する入れ歯の方が安全性が高いとは言えず、最善の治療のためどうしても必要という判断から行う場合を除き、あえて入れ歯を輸入をする医学的な理由は無いと考えられます。

厚生労働省でも平成17年の歯医者さんに向けた通知の中で、次の点を患者さんに対し十分な情報提供を行い、理解と同意を得るよう指導しています。

  1. 当該補てつ物等の設計
  2. 当該補てつ物等の作成方法
  3. 使用材料(原材料等)
  4. 使用材料の安全性に関する情報
  5. 当該補てつ物等の科学的知見に基づく有効性及び安全性に関する情報
  6. 当該補てつ物等の国内外での使用実績等
  7. その他、患者に対し必要な情報

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日本では資格のある人しか作れず材料も決まっているのに、なぜ海外で作った入れ歯は使えるのですか?

法律上は「歯科技工士法」、「薬機法」ともに日本の中だけで有効な「国内法」のため、海外における入れ歯の製作に対し制限を加えることができません。

国内に輸入された入れ歯を歯科の診療に用いることについては、歯医者さんが患者さんにとって最善の選択肢を提供する上での医学的な判断を尊重することから、その適用に責任を持つことを条件に認めている形です。

平成17年、厚生労働省は歯医者さんの医学的判断を尊重しつつ、安全な歯科診療を確保する上で、「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」という通知を歯医者さんに向けて出しています。

厚生労働省通知
国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて

平成17年9月8日
医政歯発第0908001号

各都道府県衛生主管部(局)長

国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて

 歯科医療の用に供する補てつ物等については、通常、患者を直接診断している病院又は診療所内において歯科医師又は歯科技工士(以下「有資格者」という。)が作成するか、病院又は診療所の歯科医師から委託を受けた歯科技工所において、歯科医師から交付された指示書に基づき有資格者が作成しているところであり、厚生労働省では、「歯科技工所の構造設備基準及び歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について」(平成17年3月18日付け医政歯発第0318003号厚生労働省医政局長通知)において、歯科技工所として遵守すべき基準等を示し、歯科補てつ物等の質の確保に取り組んでいるところです。
 しかしながら、近年、インターネットの普及等に伴い、国外で作成された補てつ物等を病院又は診療所の歯科医師が輸入(輸入手続きは歯科医師自らが行う場合と個人輸入代行業者に委託する場合がある。)し、患者に供する事例が散見されています。
 歯科技工については、患者を治療する歯科医師の責任の下、安全性等に十分配慮したうえで実施されるものですが、国外で作成された補てつ物等については、使用されている歯科材料の性状等が必ずしも明確ではなく、また、我が国の有資格者による作成でないことが考えることから、補てつ物等の品質の確保の観点から、別添のような取り扱いとしますので、よろしく御了知願います。

別 添 

 歯科疾患の治療等のために行われる歯科医療は、患者に適切な説明をした上で、歯科医師の素養に基づく高度かつ専門的な判断により適切に実施されることが原則である。
 歯科医師がその歯科医学的判断及び技術によりどのような歯科医療行為を行うかについては医療法(昭和23年法律205号)第1条の2及び第1条の4に基づき、患者の意思や心身の状態、現在得られている歯科医学的見地も踏まえつつ、個々の事例に即して適切に判断されるべきものであるが、国外で作成された補てつ物等を病院又は診療所の歯科医師が輸入し、患者に供する場合は、患者に対して特に以下の点について十分な情報提供を行い、患者の理解と同意を得るとともに、良質かつ適切な歯科医療を行うよう努めること。

1)当該補てつ物等の設計
2)当該補てつ物等の作成方法
3)使用材料(原材料等)
4)使用材料の安全性に関する情報
5)当該補てつ物等の科学的知見に基づく有効性及び安全性に関する情報
6)当該補てつ物等の国内外での使用実績等
7)その他、患者に対し必要な情報

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自分のかかっている歯医者さんでも使われているのでは・・・?

中国を中心とした海外への技工物発注は、現時点では歯科全体において、ごく僅かなケースと言えるでしょう。ほとんどの歯医者さんでは、法律に従い、国内で製作される入れ歯が治療に使用されています。

一方、確かに海外から輸入される入れ歯は年々増えてきているとの報告もあります。自分の口で長年機能するものですから、入れ歯やそれに関する情報にも関心をお持ちいただければと思います。

※特殊なケース・「海外で作った」と言われた入れ歯を使用しているのですが・・・LinkIcon

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「海外で作った」と言われた入れ歯を使用しているのですが・・・

これまで海外に入れ歯の製作を依頼する理由は「日本国内では製作ができない」ということがほとんどでした。海外では使用実績がある材料であっても、日本でそれを日常的な入れ歯製作のために使用するには「医療機器」としての承認を受ける必要があります。

高い安全性確保のため、日本の医療機器の承認申請には大変厳密な審査があり、承認を受けるまでには何年もの期間がかかります。

優れた材料をなんとか患者さんの治療に役立てたい。こうした歯医者さんの医療的な判断と、それを使用することへの責任を元に、限定されたケースとして海外への技工物発注が行われていたという経緯があります。

代表的な例としては「バネの見えない入れ歯」として審美性の高い「ノンクラスプデンチャー」があげられます。この材料は長年海外で利用されてきましたが、日本国内での承認申請には時間がかかり、安全性は分かっていても、長い間、国内では作ることができませんでした。

これを歯医者さんが患者さんのため、海外での使用実績や安全性を確認し、自分の責任において製作を依頼、治療に適用してきました。

現在では国内でも材料の使用が認められるようになり、海外に製作を依頼する必要が無くなりましたが、当時日本では製作ができなかった時代に、先生が「より良いものを」と判断されて適用したのではないかと思われます。

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日本の入れ歯であっても、問題が生じることはあるのでは?

入れ歯を口に入れたとたん、強い不快感が現れるなど症状が出れば、即座に使用を中止し、流通をストップすることで、被害の拡大を防止し、原因を究明することができます。

しかし入れ歯の「材料」が原因のトラブルでは、口の中で長期に渡り使用するうち、何年かしてから問題が現れることが多く、症状が現れた時にはたくさんの患者さんに適用されてしまっているという恐れがあります。

それを防ぐため、国内では非常に厳しい歯科材料の承認プロセスが薬事法により定めれており、長い期間をかけて安全性を確認しているのです。

「安全な歯科材料を作る」ことと同時に、万一問題が発生した場合に備え、迅速な原因の特定、問題拡大の防止、問題の解決を行うための規定がされています。

「問題を生じさせないこと」、「問題が生じた場合にも迅速な対応ができること」。この二つが対になり、国の責任において法的に整備、管理されることで、歯科医療の安全性が保たれています。一方、海外で製作された入れ歯を治療に用いる場合には、こうした法律の適用対象にはなりません。

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保険の治療で海外の入れ歯が使われることがあるんですか?

保険診療は、安全で均質な医療を国民が平等に受けられることを目的に、日本の公的医療保険制度として整備されています。

各保険者(国、市町村、健康保険組合等)は、被保険者(加入者)から保険料を徴収し、被保険者が医療を必要とする状態になった時には、その中から被保険者に対する診療報酬の一部を医療機関(病院)に支払います。

このため保険診療では、治療内容に関するルールがあり、歯科でも適用することができる入れ歯の種類や材料が定められています。

海外で製作された入れ歯の適用について、平成18年10月、日本政府は「医療保険各法による療養の給付又は同法による医療の対象となっていない」としています。

このため、歯医者さんが輸入、治療に適用をした場合、治療に用いた入れ歯は医療保険の給付対象とならず、また一連の治療に関しても保険診療と認められなくなり、実質的に保険診療において適用することができません。

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国内で使用されている安全な材料を使っていれば、材質的な問題はないのでは?

使われている材料の同一性確保が問題になります。

日本国内で使用される歯科材料は、薬事法による厳しい規制と管理がされており、国内で歯科材料として販売されている材料には高い安全性が担保されています。それならば、国内で使用される歯科材料を海外の義歯製作でも使用すれば、輸入義歯でも材料的には安全ということになります。

しかし問題は「その材料が本物であるか」。日本、ドイツ、アメリカ製品など安全性、機能性、デザインにおいて質の高い製品はどうしても真似されやすく、国外では単に名前やパッケージだけを似せたものから、専門家でも判別が難しい精巧なものまで数多くのコピー商品が流通しています。

薬事法や関税法の強固な規制により、こうした歯科材料のコピー商品が国内に流入、使用されることは、ほとんどありません。しかし過失、故意の理由を問わず、コピー商品が使用され、義歯という形になってしまった場合、その判別を行うことはほとんど不可能です。

人工歯

国内メーカー人工歯の例を見ると、材料の段階であっても歯の形態や色調、パッケージに至るまで大変精巧に複製されており、本物と見分けるのは困難です。しかし人工歯の硬度は本物に対し大きく劣るだけではなく、国内規格の基準にも達しないものでした。当然義歯に期待される機能や耐久性は損なわれる結果となります。

正規品とコピー製品の硬さ
硬質レジン歯はJIS規格でビッカース硬度21Hv以上とされており、日本製正規品の硬さは25.1Hvであるが、コピー商品は検査機計測可能範囲(18.7Hv)を下回る結果に

ノンクラスプデンチャー素材

金属のバネ(クラスプ)が見えないことで人気のあるノンクラスプデンチャー用の材料も、有名メーカーの製品は沢山のコピー商品があります。これはパッケージには本物と同様の名称・ロゴが用いられていますが、中身は全く異なるものでした。

国外から輸入する義歯については、現状ではすべて歯科医師の判断によるものとされていますが、完成した義歯を壊したり削ったりして材料の安全性を確認することはできません。

しかし問題が生じた場合、歯科医師が全ての責任を負わねばならず、歯科医療の安全性とともに、歯科医院への信頼という点でも大きなリスクとなる可能性も否めません。

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